夏の陽射しと共に戻ってきたあいつ——COVID-19再び

はじめに

暑くなればウイルスは滅びる。などという幻想がまことしやかに囁かれたのは、2020年の春先であったか。あれから幾年。
季節に関係なく流行を繰り返す病原体に、人類はまるで“初恋の相手に裏切られ続ける純情青年”のように、何度も希望を打ち砕かれてきた。

そして2025年夏。猛暑と共に戻ってきたのは、セミの声でも、盆踊りの太鼓でもなく、あの忌まわしき「新型コロナウイルス」である。
しかも新顔のNB.1.8.1株、別名“Nimbus”を引き連れて、堂々たる再登場である。
季節は変われど、変わらないのはこのウイルスと、それに対する人類の“記憶力の欠如”である。

現在の感染状況

2025年5月、世界保健機関(WHO)は再び警鐘を鳴らした。
世界73カ国でCOVID-19の検査陽性率が11%に達し、これは2024年7月以来の高水準である。

アメリカでは26州で感染者数が増加傾向を示し、小児救急外来は軽度〜中等度の呼吸器症状を訴える患者で混雑している。
中国やインド、フランス、ドイツ、さらにはオーストラリアなどでも同様の動きが見られ、
パンデミックという言葉が再び現実味を帯び始めている。

ウイルスの“夏仕様”

2020年代初頭、COVID-19には季節性がないとされていたが、近年では明確に“冬の波”と“夏の波”が交互にやってくるパターンが見られる。
その原因の一端を担っているのが、次々に登場する変異株の存在である。

今回注目されているのはNB.1.8.1、通称“Nimbus(ニンバス)”。
その名の通り雲のように広がり、どこにでも入り込み、時に激しく、時に静かに、感染を拡大させる。
この変異株は、従来株と比べ感染力が強く、また免疫回避性にも優れており、
ワクチン接種済みの人々にも再感染のリスクを突きつけている。

拡大する要因——それは“人間の行動”

  • 油断と馴れ:マスクを外し、集まり、換気を忘れ、消毒を怠る。人々が“平常”に戻ったことこそが、ウイルスの格好の侵入経路である。
  • ワクチン免疫の消失:接種から半年以上が経過した高齢者や基礎疾患を抱える層は、十分な防御が維持されていない。まさに再感染待ちの状態である。
  • 変異株の強化:感染力と免疫逃避能力を兼ね備えた変異株の登場は、これまでの対策をすり抜けて広がっていく。
  • 旅行・帰省ラッシュ:夏休みやお盆を控えた人の移動が、国内外の感染拡大を後押ししているのは言うまでもない。

今、できること

  • ワクチン接種の継続(高リスク層は特に最新型の接種を)
  • マスクの着用(密になりやすい場面では必須)
  • 換気の励行(学校、職場、家庭で)
  • 抗原検査キットの活用(初期症状があれば即チェック)
  • 体調不良時の出勤・登校回避(優しさこそ社会の防波堤)

結語

COVID-19は終わっていない。終わったことにしたい気持ちはわかるが、それは単なる“現実逃避”でしかない。
この夏もまた、我々の“警戒心の低下”をウイルスは嗅ぎつけ、扉をノックしてくるだろう。

マスクをすることは弱さではなく、思慮深さの証であり、ワクチンを打つことは、未来の自分への保険である。
誰かを守るために、そして自分が“誰かにとっての大切な人”であるために、もう一度、あの基本を思い出そうではないか。

とひとりごつ