コロナ インフルエンザ感染症における血液検査の必要性

いわゆる風邪症状、のどいた、発熱などはインフルエンザやコロナ感染症あるいは細菌性気管支炎でも似ています。

「風邪だから、抗生剤を処方しておく」などと言う不適切な処方はあってはなりません。

当院では、感染症を疑わせる症状を呈した患者様の場合、驚かれるかもしれませんが、まず血液を検査し白血球数や血小板数とCRPを測定し、インフルエンザやコロナ感染症が疑われたときにはじめて鼻咽頭ぬぐい液による抗原検査を行います。

このように、短時間(5分)で検査できるとはいえ、風邪様症状の際に血液検査は妥当な検査であったか否かを過去一年間の検査結果から検討しました。

調査期間
2023年から現在までの、血算(全血球計算)と炎症反応であるCRP値について抗原検査結果により診断したインフルエンザ患者群、コロナ感染症患者群とその他の症例における血算とに差があるか検討した。

グループ名件数
コロナ感染症(C)54
インフルエンザ(F)23
上記以外の患者(A)1525

 

経験上、ウイルス感染症では白血球数は減少する。また、インフルエンザでは末梢血血小板が増える。さらにコロナ感染症ではインフルエンザと異なり炎症反応が高く出る。

これらの推測は正しいと言えるか検討した。

総白血球数件数平均値標準偏差
コロナ感染症(C)545216.71558.1
インフルエンザ(F)235000.01497.3
上記以外の患者(A)151762663316.3

 

血小板数件数平均値標準偏差
コロナ感染症(C)5221.55.4
インフルエンザ(F)2124.84.0
上記以外の患者(A)152525.66.3

 

CRP値件数平均値標準偏差
コロナ感染症(C)541.51.7
インフルエンザ(F)220.60.8
上記以外の患者(A)8610.41.4

 

3群間の平均値に統計的有意差はあるか、検討した結果

 

白血球数

  • A群とC群の平均値には、統計学的に有意な差があると言えます (p値 < 2.2e-16)。
  • A群とF群の平均値には、統計学的に有意な差があると言えます (p値 < 2.2e-16)。
  • C群とF群の平均値には、統計学的に有意な差があると言えます (p値 = 0.002)。

すなわち、コロナやインフルエンザ患者は明らかに末梢血白血球数が減少するといえる。さらに、インフルエンザはコロナ感染よりも白血球の減少が大きい。

 

血小板数

  • A群とC群の平均値には、統計学的に有意な差があると言えます (p値 = 0.004)。
  • A群とF群の平均値には、統計学的に有意な差はないと考えられます (p値 = 0.472)。
  • C群とF群の平均値には、統計学的に有意な差はないと考えられます (p値 = 0.342)。

A群、C群、F群の血小板数の平均値には、統計学的に有意な差があると言えます。

コロナ感染症患者では血小板が減少すると言える。

 

CRP値

  • A群とC群の平均値には、統計学的に有意な差があると言えます (p値 < 2.2e-16)。
  • A群とF群の平均値には、統計学的に有意な差があると考えられます (p値 = 0.012)。
  • C群とF群の平均値には、統計学的に有意な差はないと考えられます (p値 = 0.117)。

A群、C群、F群のCRP値の平均値には、統計学的に有意な差があると言えます。

コロナ感染症患者では有意にCRP値が増加していると言える。

まとめると下記のようになる

白血球数血小板数CRP
コロナ感染症(C)
インフルエンザ(F)↓↓

 

本来、上記の変化は同一患者の健常値と比較すべきであるが、記録のない患者においては比較対象がないので実検査値を用いて検定した。

風邪様症状程度で血液検査をするのかと驚かれることもありますが、上記の結果より血液検査は無駄なことではなく、より正確に診断するのに役に立つという事をご理解頂ければ幸いです。

永井一成
看護師 安田聡子

タイトルとURLをコピーしました