蕁麻疹(じんましん)に漢方薬『四逆散』は有効か?
仮説
慢性蕁麻疹の治療に四逆散を併用することで、抗ヒスタミン薬の使用量を減らすことができるのではないか。
対象と方法
- 対象:数ヶ月以上、退勤後や休日に蕁麻疹・皮膚掻痒が出現し、抗ヒスタミン薬を頓用していた患者
- 処方:デスロラタジン(5mg/日)、四逆散(7.5g/日)
- 服用方針:抗ヒスタミン薬は予防的には使用せず、症状が出たときのみ頓服
- 方法:過去2年間の診療記録から16例を抽出し、処方日数を調査
結果(16症例)
No | 年齢 | 性別 | カルテ番号 | 抗ヒ剤日数 | 四逆散日数 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 51 | M | 108740 | 10 | 21 |
2 | 47 | F | 112080 | 80 | 140 |
3 | 41 | F | 114940 | 10 | 7 |
4 | 38 | M | 115820 | 150 | 210 |
5 | 30 | M | 116870 | 20 | 57 |
6 | 43 | M | 119230 | 40 | 63 |
7 | 41 | F | 120020 | 20 | 224 |
8 | 34 | F | 120310 | 10 | 70 |
9 | 23 | F | 120460 | 40 | 63 |
10 | 22 | F | 121460 | 20 | 63 |
11 | 43 | F | 123430 | 10 | 14 |
12 | 31 | F | 129870 | 30 | 91 |
13 | 35 | M | 130190 | 10 | 63 |
14 | 33 | M | 132140 | 20 | 105 |
15 | 22 | F | 132630 | 20 | 28 |
16 | 54 | F | 133520 | 20 | 28 |
平均(M=6, F=10) | 年齢:M=38, F=36 | 31.88 | 77.94 |
結果と考察
四逆散の併用により、抗ヒスタミン薬の使用量が大きく減少し、服用を中止できた症例も見られた。
特徴的だったのは、症状の出現が勤務中ではなく、休日や退勤後のリラックス時に多かった点である。これは、交感神経の過緊張が緩和された際に副交感神経が優位となり、皮膚症状が出現する「リバウンド反応」によるものと考えられる。
実際、精神安定作用を持つ他の漢方(例:桂枝加竜骨牡蛎湯)でも、長年の抗ヒスタミン薬服用例において1ヶ月以内に改善が見られた。
したがって、発症のタイミングを詳細に問診し、自律神経のアンバランスが関与していると判断される場合には、漢方併用が有効と考える。
結論
交感神経の過緊張から解放されたタイミングで起きる蕁麻疹・掻痒に対し、四逆散の併用により抗ヒスタミン薬の使用を減らし、症状を著しく改善できる可能性がある。
謝辞
本調査にご協力くださった方々に深く感謝申し上げます。今後も患者様に役立つ臨床知見の蓄積に努めてまいります。
信州会クリニック
院長:永井 一成
看護師:安田 聡子